杉並ユネスコ協会
第9回韓国スタディツアー
2015年12月27日(日)〜30日(水)

   第9回韓国スタディツアーが昨年末にソウルで行われました。

   本ツアーの目的は、青年自身が韓国の歴史・文化を現地で学び、日韓関係について理解を深めることで、将来の日韓友好の土台づくりを行うことです。

   今回のツアーには青年部6名、理事2名の計8名が参加しました。

   なお、本ツアーは公益社団法人日本ユネスコ協会連盟の「2015年度青少年ユネスコ活動助成」を受けて実施しました。

   韓国スタディツアーは「異文化理解」と「平和学習」の2つのテーマで構成されています。

   「異文化理解」に関しては、韓国の歴史遺産や歴史博物館を訪れたり、韓国人とディスカッションを行ったりして、韓国の文化について理解を深めます。

   「平和学習」に関しては、朝鮮半島で起こった戦争について、実際に戦争・平和関連施設を訪れることで追体験し、平和の尊さを学びます。

   「異文化理解」を目的として訪問したのは、韓国ユネスコ協会連盟(韓国青年とのディスカッション)、景福宮および国立民俗博物館です。

   一方、「平和学習」を目的として訪問したのは、板門店と西大門刑務所歴史館です。

   以下、それぞれの訪問内容と青年たちの様子を簡単に紹介します。

   まず、ツアーの最初の訪問先となった韓国ユネスコ協会連盟では、韓国人高校生3名との「日韓両文化の比較」をテーマとしたディスカッションを行いました。

   主なトピックは宗教、クリスマス・正月の過ごし方、伝統食(キムチ)、サブカルチャー(ポップソング)、対人関係とマナー、日本・日本人のイメージ、南北朝鮮の関係などでした。

   ディスカッションは当初1時間30分の予定でしたが、話が尽きなかったため、昼食を挟んで、その後2時間ほど延長して行われました。

   最も印象に残ったトピックは、韓国人の日本・日本人に対するイメージです。

   韓国人の中には日本(とくに日本政府)に対して良いイメージを持っていない人が多い一方で、日本人や日本文化に対しては親しみを持っている人が多いとのことでした。

   それを聞いた当協会の青年たちは、国家同士の関係と国民同士の関係を切り離して考えることが必要であることを学んだようでした。

  

   次に訪問したのは景福宮(キョンボックン)と国立民俗博物館です。

   景福宮(左下の写真)は14世紀末に建てられた朝鮮王朝の王宮であり、歴代の王が即位式や日常の政務を執り行った場所です。

   その敷地内に設置されているのが、朝鮮の伝統的な生活様式が展示されている国立民俗博物館です。

   衣食住の特徴とその時代ごとの移り変わりが、写真や模型を通じてわかりやすく説明されていました(中央および右下の写真)。

   青年たちは日本の伝統的な建築・生活様式との違いを、実物を目の前にして興味深く観察していました。

  

   翌日は北朝鮮との国境にある板門店(パンムンジョム)を、バスツアーを利用して見学しました。

   板門店は1953年に朝鮮戦争の休戦協定が調印された場所です。

   現在も南北朝鮮の休戦状態を監視するために、板門店一帯(「共同警備区域」)に兵士が常駐しています。

   日本では想像できない状況に青年たちは驚きを隠せないようでした。

   また60年以上にわたる朝鮮分断の歴史を目の当たりにして、同じ民族同士が争うことや離散家族が生まれることの悲惨さを実感したようでした。

  

   最後の訪問先は、日本が20世紀前半に朝鮮を統治する際に朝鮮・韓国人政治犯を収容した西大門(ソデムン)刑務所です。

   現在では歴史館として獄舎が復元され、当時収容されていた朝鮮・韓国人の生活の様子が展示されています。

   加害者としての日本を知ることができる貴重な場所であると言えます。

   青年たちは館内で偶然出会った韓国人の青年たちと親しくなり、日本が過去に行った行為について意見を聞いていました(右下の写真)。

   韓国人の青年たちは過去と未来を区別して考えるべきとの意見を持っており、当協会の青年たちもその考え方に大いに共感していました。

  

   今回のツアーを通じて、参加者一人一人が韓国に対する思いや日韓関係についての意見を自分なりに持つことができたようです。

   その姿から、将来の日韓友好の土台づくりとして本ツアーの成果が十分あったように感じました。

   最後に、ディスカッションを含む交流プログラムを準備してくださった韓国ユネスコ協会連盟の皆様と、貴重な助成金を提供してくださった日本ユネスコ協会連盟の皆様に心よりお礼申し上げます。

※本ツアーの詳しい情報は「第9回韓国スタディツアー報告書 2015」をご覧下さい。

(岩野智)