2017年10月9日(月・祝)東京ジャーミイ・トルコ文化センター
10月の中学生クラブは代々木上原にある東京ジャーミイ・トルコ文化センターを訪問し、イスラームとトルコの文化について学びました。
東京ジャーミイはイスラーム教のモスク(礼拝堂)であり、オスマン・トルコ様式のデザインが施された美しい建築物です。
その歴史は古く、館員の下山茂さんによれば、1917年のロシア革命により迫害を受けたイスラーム教徒(トルコ人)が日本へと逃れ、1938年に渋谷区富ヶ谷(現在の代々木上原)にモスクを建立したのが始まりとされています。
避難してきたトルコ人たちはラシャと呼ばれる厚手のウールをロシアから持ち出し、それを日本で販売することで生計を立てていたそうです。
2000年にはイスタンブールのモスクを模倣した2代目のモスクが完成し、国内最大級とも評されるイスラーム教の寺院として現在に至っています。
案内役の下山茂さん
1階ホールでの説明
下山さんはイスラーム教のモスクの特徴とトルコ・イスラーム文化について説明してくださいました。
まず、東京ジャーミイの外壁にも見られるように、人工の鳥の巣と水飲み場(蛇口と水槽)がモスクには設置されているそうです。
これらは動物もモスクに立ち寄れるようにという意味で、人間と動物の共存を表しているとのことでした。
次に、礼拝を行う場所では一定の方向に向かって壁に布が掛けられていたり、壁を窪ませていたりします。
これはイスラーム教の聖地であるメッカの方角を表しており、さらにモスク全体もメッカの方角に向かって建てられているそうです。
下山さんによれば、イスラーム教(とキリスト教)の神は見えないものとされており、礼拝する方角を聖地と定めたため、その目印となるものが必要であったとのことでした。
水飲み場
礼拝の方向を示す青い布
下山さんはトルコとイスラームの文化についても紹介してくださいました。
私たちの身の回りには、トルコあるいはイスラーム圏発祥のものがいろいろあります。
例えば、コーヒーやチューリップ、カメラ、手術器具の鉗子(かんし)、アラビア数字、幾何学などが挙げられます。
コーヒーについては、エチオピア原産のコーヒー豆がアラビア半島に伝わり、そして16世紀頃にオスマン帝国に伝わったそうです。
オスマン帝国では軍人がコーヒーを優先的に飲むことができたそうで、それは戦地で軍の士気を高く保つという理由からでした。
やがて17世紀にオスマン帝国がハプスブルク家のオーストリア帝国と戦争を行った際に、ウィーンにコーヒー豆を置いていき、それが現在のウィンナ・コーヒーにつながっているとのことでした。
チューリップについては、その発祥地はオランダだと思われがちですが、原種が生まれたのは実はトルコであり、その後オランダで品種改良され商品作物として栽培されるようになったそうです。
また、チューリップは1つの茎に1つの花を咲かせることから、一神教のイスラーム教を象徴する花とされ、モスクのあちらこちらに飾りとしてデザインされるようになったとのことでした。
下山さんは説明の最後に、世界は西洋と東洋のみから成り立っているわけではなく、イスラームをはじめとする諸文明が存在し、それらの文明同士が影響を与え合って今日の世界があるということを強調されていました。
トルコ・イスラーム文化の説明を受けたのち、2階にある礼拝所を見学しました。
礼拝所は伝統的なオスマン・トルコ様式となっており、扉に描かれた緻密な幾何学文様、大きなドーム型の天井、壁面の流麗なカリグラフィ、明るく鮮やかなステンドグラスが非常に印象的でした。
内部は正面の祭壇(メッカの方角)に向かって左右対称のつくりとなっており、これはどのモスクにも共通する特徴だそうです。
床には赤と緑の縞模様の絨毯が敷かれており、礼拝者は赤色の線に沿って横一列に並ぶことになっています。そこには、信者は皆平等であるというイスラーム教の精神が示されているとのことでした。
私たちが見学した時間にちょうど礼拝があり、祈りをささげる信者の方々を見ることができました。
下山さんによれば、イスラーム教では1日5回の礼拝があり、それは人間が食事をするのと同じくらい重要な営みなのだそうです。
すなわち、食事は体にエネルギーや栄養を取り込むために行うものである一方、礼拝は心に栄養を取り込みポジティブに生きるために行うものであるとのことでした。
礼拝を終えた信者の方々を見ると、確かに晴れやかな表情でリフレッシュされているように見えました。
礼拝所入口
礼拝所内部
ドーム型の天井
祭壇
東京ジャーミイ・トルコ文化センターの見学を終えて、イスラームの世界がより身近になったように感じました。
参加した中学生たちも、まるで夢の中にいるような美しいモスクに身を置いて、イスラーム文化への関心を高めるととともに、心癒されるひとときを過ごすことができたのではないでしょうか。
次回の中学生クラブ(11月11日)は、セントメリーズ・インターナショナル・スクールのキム先生をお招きして、「スタディ・オブ・エシックス」(倫理の授業)を行います。
(岩野智)