講演会「日本の子どもの貧困」
講師 松見幸太郎氏(特定非営利活動法人キッズドア事務局長)
大澤祥子氏(社会人ボランティア) 伊藤優希氏(学生ボランティア)
2018年7月1日(日)セシオン杉並 第8〜10集会室
参加者 40名
今年は、7月1日(日)14~16時 セシオン杉並3階第8~10集会室に於いて、一昨年に引き続き、特定非営利活動法人「キッズドア」の活動を通して「日本の子どもの貧困」について考える講演会を行った。
講師は、キッズドア事務局長 松見幸太郎氏と社会人ボランティア 大澤祥子さん、学生ボランティア 伊藤優希さん。
講演会は、松見氏の日本の子どもの貧困問題とキッズドアの活動について、データや、生徒や保護者へのインタビュー映像をまじえながらの説明を受け、次に、ボランティア2名の体験を伺った。
大澤さんは、勉強を教えることで社会の役に立ちたいとボランティアを始めたと話された。
「勉強するのは当たり前という環境で育ったため、そのように考えていましたが、子どもたちに接しているうちに、自分はとても狭い考えにとらわれていたことに気づきました。ボランティアをしている時に様々な点に気をつけています。子どもの顔と名前を覚える、相手に圧迫感を与えないよう気を付ける等々、子どもたちにどのように寄り添うとよいのかいつも考え悩みながら、ボランティアをしています」と語られた。
伊藤さんは、「最初は緊張の連続でしたが、話を聴くことに徹してみたら上手くいくようになりました。基本的なことが分からない子どもが多かったですが、分からないところまで戻って徹底的に指導するようにしました」と語られた。
「その結果、僕自身の『聴く力』が向上した、『伝わることば』で伝えていくことをするようになった。『正しいことを言うから聞いてくれる』のではなく、『あの人が言うから聞く』ということが分かり、信頼されることを意識するようになった等、自分自身にも大きな変化があった」とも語られた。
松見幸太郎さん
大澤祥子さん
伊藤優希さん
当日の参加者は約40名。議員さんや、地元で子ども食堂を行っている人、これから何かしたい人など、問題意識の高い方が参加されていたと思った。質疑応答は、実践に基づいた体験談からくる意見が飛び交う活発なものであった。
「キッズドア」の活動方針は、そのホームページから引用すると「今の日本では、子どもたちを取り巻く環境が急速に悪化し、子どもたちの目の輝きは、日に日に失われています。経済的に苦しい家庭、ひとり親家庭、また、児童養護施設や被災地で暮らす子どもたち、さまざまな困難な状態にあって、高校や大学への進学をあきらめる子どもが日本にもたくさんいます。生まれ育つ環境によって、夢や希望を持てない子どもがいるのは成熟した社会とはいえません。親の収入格差が子どもの教育格差であってはならない。すべての子どもが夢と希望をもてる社会へキッズドアは、2007年の設立以来、日本国内の子ども支援に特化し、すべての子どもが将来への夢や希望を持てる社会の実現に向けて活動しています」とある。
その方針で行政と連携した活動が多く、他方、子ども食堂の活動は、Wikipediaの記述には「開催頻度は月1回または月2回が多く、運営側からも「月1回のペースなら、気負わず無理なく、長く続けられる」との声があるという。次いで月に2回から3回、週1回と続き、週5日以上開催する食堂も多い。時間帯は平日夜が多いが、登校前の朝食の時間帯や、給食のない週末の昼食時、長期休暇期間を中心として取り組む食堂、夏季休暇や冬季休暇に限定して営業している食堂もある」とある。
その活動は地域に直結したものながら、公的なサポートを模索してもいた。子どもへのサポートは多角的であることが求められていると思う。なので、それらの双方向の交流は有意義だと思われた。
私共、杉並ユネスコ協会は、子どもの貧困に対して実践的な活動を行ってはいないが、このような機会を設けることで、様々なグループのパイプ役が果たせるのではないかと、考えさせられた。
参加者の感想(アンケートより抜粋)
・日本の子どもの7人に1人が貧困生活を送っているとは驚いた。
・「子どもの貧困」が身近にあることがイメージしづらかったが、13%以上も存在するということがよくわかった。
・誰でも当たり前に受けられると思っていた家庭での教育が受けられない家庭もあることがわかった。キッズドアはとても貴重な活動をしていると思う。
・「貧困を生まない社会」キッズドアは sustainable(持続可能)な社会を作る一部をやっていただいている団体なのだと大変参考になった。これからもがんばってほしい。
・意見交換は大変に参考になった。
・貧困問題に目を向けている人がまだまだ少ないことがわかった。
・lowest SES(所得や学歴等の社会経済的な指標が最も低い家庭)の子どもが3時間以上勉強してもhighest SES(同指標が最も高い家庭)の全く勉強しない子どもに劣るというデータにびっくりした。我が家はSESが高いし勉強する機会を与えられているので、たくさん努力して社会で役に立てる人間になり、貧困の中にいるような子どもたちを支えられるようになりたい。(お子さんの参加者)
・学習支援について理解した。でも私には無理。 他に何かできることはないかを考えていきたい。
・今後の活動に生かしていけるよい話だった。
(辻 邦)