2018年5月12日(土)セシオン杉並 視聴覚室・集会室
初夏の陽気となった5月12日、中学生クラブでは前半に英会話、後半にドイツについてのお話がありました。
ドイツの国紹介をしてくださったのは、ドイツ人留学生のアントニア・美芳・クノーブラッハさんでした。
クノーブラッハさんは祖母が日本人のクォーターで、6月まで都内の高校に在籍しています。
まず、クノーブラッハさんはドイツの地理や食文化について話してくださいました。
ドイツはヨーロッパの西方に位置し、9ヵ国と国境を接しています。
山や川などの自然も豊かで、ドイツ国内を縦断するライン川は信濃川の4倍もの長さがあるそうです。
食文化については、ドイツ人がよく食べるものとしてパン、ソーセージ、ジャガイモを挙げてくださいました。
パンは硬いパンが主流で、ドイツ人はベーカリーをよく利用するそうです。
ソーセージも専門店で販売されていますが、その種類は1000以上にも上るとのことでした。
クノーブラッハさんの通うドイツの学校では、昼食にパンと肉料理がよく食べられ、焼き菓子のプリッツェルも間食として人気があるそうです。
次に、ドイツの主要都市・観光地について紹介してくださいました。
首都ベルリンは最も人口の多い都市で政治経済の中心となっています。また高い山もあり、スキーやハイキングが楽しめるそうです。
ベルリンの歴史の中で忘れてはならないのは、第二次世界大戦そして冷戦期に至る苦難の時代です。
ドイツ人は子どもの頃から、ナチスによる大量虐殺や東西分断によって民族が引き裂かれた歴史を学ぶそうです。
クノーブラッハさんは、ベルリン市内にある大量虐殺の慰霊碑やベルリンの壁のアートギャラリーを映像で見せてくださいました。
大量虐殺の被害者の慰霊碑(右上)
ベルリンの壁に描かれた平和を願う絵
その他の都市として、ドレスデン、ケルン、ミュンヘンを紹介してくださいました。
ドレスデンは芸術の街とも言われ、名門オーケストラの本拠地が置かれているそうです。
またライン川が流れ、川沿いには伝統的な家屋や古城が立ち並び、その景観はユネスコ世界文化遺産にも登録されています。
ケルンも歴史の古い街であり、世界遺産のケルン大聖堂やローマ帝国の遺跡である水道橋などが有名とのことでした。
ミュンヘンは強豪サッカーチームの本拠地としても知られていますが、ミュンヘンを含む南ドイツのババリア地方ではビールが有名だそうです。
南ドイツではもう1つ、ロマンティック街道と呼ばれるいくつもの古城や教会、歴史的な街並みが臨める観光ルートがあります。
このルートは日本人観光客にとくに人気があるとのことですが、クノーブラッハさんによるとドイツ人の間ではあまり馴染みがないそうです。
ライン川流域の景観
ロマンティック街道
続いて、歴史上有名なドイツ人が紹介されました。
16世紀のイングランド女王エリザベス1世、18~19世紀の作曲家ベートーベン、『グリム童話』の編集者グリム兄弟、19~20世紀の理論物理学者アインシュタイン、そして『アンネの日記』の著者アンネ・フランク。
日本でもおなじみの名前がずらりと並びます。世界に影響を与える人物を数多く輩出してきたのがドイツなのです。
さらに、クノーブラッハさんは簡単なドイツ語を中学生たちに教えてくださいました。
「Guten Morgen」(おはよう)や「Guten Tag」(こんにちは)といった挨拶のほか、さまざまなシチュエーションで使用できる「Bitte」(どういたしまして、どうぞなど)という便利な言葉も紹介してくださいました。
ドイツの著名人
万能なドイツ語「Bitte(ビッテ)」
最後に、クノーブラッハさんはドイツの教育制度について説明してくださいました。
ドイツの学校制度は日本の6・3・3・4制とは異なり、小学校の4年間を終えたのち大学を目指すか(8~9年間)、事務職を目指すか(6年間)、専門職・職人を目指すか(5年間)の3つのコースに分かれるそうです。
どのコースに進むかは成績によって決まり、小学校卒業時点で将来の職業が決まると言っても過言ではないようです。
授業内容も日本と異なっている点があり、例えば歴史の授業で20世紀のドイツの暗い過去を時間をかけて学んだり、キュリー夫人にちなみ物理の授業で放射能と原子力について詳しく学んだりするそうです。
授業の進め方も先生が一方的に話すというよりは、生徒からの発言や生徒同士の議論を中心に展開されていくとのことでした。
クノーブラッハさんによれば、生徒が授業を受ける際に禁止されている行為があり、それは発言するときに手先をピンと伸ばして挙手することだそうです。
その手の挙げ方はナチスの敬礼を想起させるため、挙手する際は人差し指だけを伸ばすようにしているとのことでした。
ドイツの学校制度
禁止されている挙手の仕方
クノーブラッハさんのお話は若者目線の構成で映像も多く交え、とてもわかりやすいものでした。
またドイツの明るい部分だけではなく暗い部分もしっかり説明しようとされていたのが印象的でした。
ドイツが持つさまざまな顔を知ることができ、ドイツがより身近になったように感じました。
クノーブラッハさん、ありがとうございました。
次回の中学生クラブは、6月9日(土)の英会話とスポーツ大会です。
(岩野智)