2017年1月14日(土)セシオン杉並 集会室・視聴覚室
小雪まじりの寒い土曜日、新年最初の中学生クラブがおこなわれました。
前半の英会話では、ジョナサン先生(アメリカ)、エミリー先生(フランス)、エッシー先生(パラオ)と一緒に、身近な話題のトークなどで楽しい時間を過ごしました。
後半の国際理解では、青年部によるカンボジア・スタディツアー報告と韓国スタディツアー報告が行われました。
まずカンボジア・スタディツアー報告では、高校2年生の八尾成美さんから、彼女が昨年8月に参加した同ツアーの内容(詳しい情報はこちら)が紹介されました。
カンボジアでは、1970~90年代に発生した内戦、とくに1970年代後半のポル・ポト政権による強制労働・大量虐殺により、国内は荒廃し、国家の発展が大きく阻害されました。
例えば教育分野では、ポル・ポトが知識人を反乱分子とみなして虐殺したため、現在でも知識人の数は少ないままとなっています。
またカンボジア国民の就学率や識字率も、内戦中に教育基盤が破壊されたことで、依然として低い状況が続いています。
八尾さんはこのような教育環境を改善するため、日本ユネスコ協会連盟が進めている「世界寺子屋運動」の意義を強調していました。
「世界寺子屋運動」とは、途上国の学校に通えない貧困層のために、文字の読み書きなどの基礎教育が受けられる場を提供し、最終的に貧困からの脱却を目指すプロジェクトです。
八尾さんはさらに、カンボジアで現在行われている遺跡修復プロジェクトの様子も紹介しました。
世界遺産に登録されているアンコール遺跡群では、日本をはじめとする外国の専門家・団体が修復に携わっています。
綺麗に修復できたケースや、逆に損壊がひどくなったケースなど、携わる国・団体によって修復状況に違いがみられるとのことでした。
その一方で、バイヨン寺院の修復プロジェクトにみられるように、現地のカンボジア人を修復活動に参加させ、将来の技術者を育成するという取り組みもなされているそうです。
このように、内戦という悲劇に見舞われながらも、そこからの復興を目指して前へ進もうとしているカンボジアの様子が、高校生の視点からわかりやすく説明されました。
次に韓国スタディツアー報告では、中学生・高校生を中心とした数名の参加メンバーから、昨年12月に実施された同ツアーの内容(詳しい情報はこちら)が紹介されました。
同ツアーの主な目的は、日韓の歴史問題について考えることであり、その観点から、訪問先のうち西大門刑務所歴史館、ナヌムの家、および韓国人青年とのディスカッションについて報告がなされました。
1つ目の西大門刑務所は、20世紀前半、日本が韓国を植民地化していた時代に、日本軍が朝鮮・韓国人の独立運動家を政治犯として収容していた施設です。現在では歴史資料館として、一般に公開されています。
施設内部では、復元された獄舎や収容状況を伝えるパネル、当時の収容者に関する資料などが展示されており、それらの様子が豊富な画像を用いて、わかりやすく説明されました。
報告者からは、日本人は戦争や歴史に対してそれほど関心がない一方で、韓国人は若い時から歴史問題に関する教育を受けており、それが反日姿勢につながっているのではないかと意見が述べられました。
また、フロアの中学生たちに対して、「歴史を知ろう」、「みんなの声を聞こう」、「自分の考えを持とう」とメッセージを伝えていました。
2つ目のナヌムの家は、日中戦争から太平洋戦争にかけて日本軍の慰安婦であった方々が、現在共同生活をしている福祉施設です。
施設の敷地内には日本軍「慰安婦」歴史館があり、そこでは慰安婦に関する資料や展示パネル、再現された慰安所などが設置されています。
報告では、慰安婦問題の歴史的経緯やナヌムの家でお会いした元慰安婦の方々が紹介され、さらに慰安婦問題に関する日本と韓国の立場の違いが説明されました。
報告者からは、被害を受けた元慰安婦の方々の苦痛と悲しみを理解するとともに、和解にむけて当事者である彼女たちの意見を十分くみ取ることが重要であるとの指摘がなされました。
3つ目として、韓国人青年との間で行われたディスカッションの内容が紹介されました。
話し合われたテーマは多岐にわたり、学校生活の違いや社会的慣習、希望する職業のほか、歴史問題に対する認識についても意見交換がなされました。
報告者からは、韓国人高校生が日々受験勉強に追われ、大学入学後も厳しい就職競争が待っているという現実がありながらも、将来の夢をしっかり持って勉強に励んでいる姿が印象深かったと述べられました。
また歴史問題については、韓国人の若者の多くが日本政府に反省と謝罪を求めているという現状が紹介され、和解への道が依然として険しいことが示されました。
その一方で報告者は、今回のディスカッションにおいて歴史問題のような政治的問題を率直に話し合うことができたのは1つの成果であり、さらに歴史問題を抱えながらも友人同士として交流を深めることは十分可能であると確信したと、力強く語っていました。
青年自らが現地を視察し、自分の目と耳で直接見聞きする。それに基づく報告は非常に説得力があり、魅力的なものでした。
次回、2月11日(祝・土)の中学生クラブは、落語家の三遊亭粋歌さんをお招きして、楽しい落語を聞きながら日本文化について学びます。
(岩野智)